なにゆえに---少年審判の決定全文、加害男性の手記
遺族は、癒えることのない悲しみを抱えておられる。
そのうえ何度も踏みつけにする人たちがいる。
神戸家裁は10日、少年審判の決定全文を掲載した文芸春秋と、記事を寄稿した共同通信社の佐々木央編集委員、事件を担当した元判事で、全文を提供した井垣康弘弁護士に抗議文を送った。
神戸家裁の岡原剛所長は抗議文で「裁判官が退職後も負う守秘義務に反する行為」とした上で、「非公開とされる少年審判に対する信頼を著しく損なうもの。事件関係者に多大な苦痛を与えかねず、誠に遺憾」と厳しく批判している。
事件で当時、小学6年生だった息子の淳くん(11歳)を殺害された土師守さん(59)は、「18年もたった今になって全文を公開して意味があるのか疑問に感じます。雑誌に掲載されることで、不特定多数の人に興味本位で見られることになり、遺族としては大変辛いです」と話しています。
神戸市須磨区で1997年に起きた連続児童殺傷事件で、加害男性(32)が手記を出すことを受け、小学6年の土師淳君=当時(11)=を殺害された父親の守さん(59)がコメントを出した。全文は次の通り。
加害男性が手記を出すということは、本日の報道で知りました。
彼に大事な子どもの命を奪われた遺族としては、以前から、彼がメディアに出すようなことはしてほしくないと伝えていましたが、私たちの思いは完全に無視されてしまいました。なぜ、このようにさらに私たちを苦しめることをしようとするのか、全く理解できません。
先月、送られてきた彼からの手紙を読んで、彼なりに分析した結果をつづってもらえたことで、私たちとしては、これ以上はもういいのではないかと考えていました。
しかし、今回の手記出版は、そのような私たちの思いを踏みにじるものでした。結局、文字だけの謝罪であり、遺族に対して悪いことをしたという気持ちがないことが、今回の件でよく理解できました。
もし、少しでも遺族に対して悪いことをしたという気持ちがあるのなら、今すぐに、出版を中止し、本を回収してほしいと思っています。